オールオン4は保険適用される?医療費控除の方法をマニュアル形式で解説
この記事の監修

歯学博士・国際インプラントリサーチセンター理事長
えぼした 敬
患者様の治療実績は、累計10,000件以上(2024年7月現在)
国内外の著名な機関でインプラント治療と審美歯科の研鑽を積み、40年以上にわたり高度な歯科治療を提供。
歯周病や虫歯など、さまざまな原因で歯を失ってしまったとき、選択肢のひとつに入るのがインプラント治療の一種「オールオン4」です。オールオン4は、わずか4本のインプラント(人工歯根)を埋め込むことで、片顎全体の人工歯を支える画期的な治療法です。総入れ歯のようにグラつきにくく、天然の歯に近い感覚でしっかりと噛めるようになるため、見た目や機能面での改善が期待できます。
しかし、オールオン4の費用は決して安価ではありません。「金額面で躊躇してしまう」という方も少なくないのではないでしょうか。オールオン4は保険適用の対象となる治療なのか、医療費控除を受けられるのかといった、費用を抑えるための知識について解説します。
<この記事で分かること>
・オールオン4は、公的医療保険制度の適用外となるため、基本的に全額自己負担の自由診療である
・オールオン4の治療費は、一定の要件を満たせば「医療費控除」の対象となり、課税所得から差し引くことができる
・オールオン4の費用負担を抑えるためには、信頼できる歯科医院を比較検討し、費用対効果の高い治療を選ぶことも重要である
オールオン4は保険適用できる?
歯を失ってしまった方にとってオールオン4は、生活機能を取り戻し、審美性も追求できる治療法です。とはいえ簡単に受けられる安い治療ではありません。オールオン4には保険が適用できるのでしょうか。保険診療と自由診療の違いも交えて、適用の可否を解説します。
保険診療と自由診療の違い
保険診療とは、日本の公的医療保険制度で定められた治療内容・使用材料などを厳格に守る形で提供される、医療保険の適用を受けられる治療・診療です。年齢などの属性により、保険適用の治療は1割~3割の自己負担で受けられます。保険診療を受けるには、健康保険(被用者保険、国民健康保険など)に加入している必要があります。
高額療養費制度も、保険適用の治療に使える制度です。前年の年収(所得)によって決まった「自己負担限度額」を超える保険診療費用は、後から申請して超過分の返還を受けるか、限度額認定証(またはマイナンバーカード)を提示して最初から限度額までの支払いにできます。
一方、自由診療とは、医療保険が適用されない治療や診療です。患者の自己負担は10割で、治療方法・使用材料・料金などを医療機関が独自に設定できます。先端技術を使っていたり、審美性を重要視したりするような治療は、基本的に自由診療です。自己負担額が高くなる代わりに、受けられる治療の幅が広がるメリットがあります。
自由診療では、高額療養制度が使えません。どんなに治療費が高くなったとしても、一定額を超えた分が戻ってくることはなく、限度額という概念がないので全額自分で支払う必要があります。
オールオン4は基本的に保険適用外
オールオン4をはじめとするインプラント治療は、基本的に保険適用の対象となりません。自分の歯を失ってしまった方に対する治療で保険適用となるのは、原則として部分入れ歯や総入れ歯・ブリッジです。
保険適用できるほかの治療手段がある場合、先進的な治療や審美性も追求した治療は保険適用の対象とならない傾向にあります。保健医療に関する法律では、以下のように規定されています。
「保険医は、特殊な療法又は新しい療法等については、厚生労働大臣の定めるもののほか行つてはならない。」
出典:e-Gov法令検索『保険医療機関及び保険医療養担当規則 第8条』
オールオン4は原則として、「厚生労働大臣が定めるもの」ではない新しい治療だということです。
一部には例外も
オールオン4のようなインプラント治療は原則として保険適用の対象外ですが、現在は一部に例外も認められています。オールオン4で保険適用となる例は、次の通りです。
- 歯がない原因が先天性疾患の場合
- 病気(顎骨形成不全症など)や、事故・腫瘍などにより顎の骨を広範囲に欠損した場合
これらの特定の条件に合致する場合、オールオン4を含むインプラント治療が保険適用となる可能性があります。ただ、治療を受ける歯科医院や医師にも条件が設けられています。検討している医院に事情を伝え、保険が適用できるか問い合わせてみましょう。
医療費控除の方法をマニュアル形式で解説
オールオン4は基本的に保険が利きませんが、医療費控除の対象にはなります。保険適用された場合より自己負担額は大きくなりますが、少額でも戻ってくるとこないとでは負担感が違うはずです。医療費控除の概要と、申請手順を見てみましょう。
医療費控除の基本
医療費控除とは所得控除のひとつです。その年に支払った医療費の一部を、課税所得から差し引けます。控除の対象は、納税者自身または生計を共にする配偶者や親族などが支払った医療費です。ただし、かかった医療費の全てが控除されるわけではありません。
医療費控除の額を算出する計算式は、
「実際に支払った医療費の合計額 – 保険金などで補てんされる金額 – 10万円」です。
ただし、総所得金額等が200万円未満の場合は、その総所得金額等の5%が基準額となります。
控除額に所得に応じた所得税率を掛けたものが、還付される金額です。なお、医療費控除の上限額は200万円と定められています。
参考:国税庁『No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)』
医療費控除額の計算例
医療費控除の計算は、年間の医療費総額と所得によって変わります。ここでは、具体的な例を挙げて計算方法を解説します。
例1:総所得金額等が200万円以上の場合
Aさんは年収500万円で、総所得金額等は300万円だとします。
1年間にかかった医療費の合計が70万円、生命保険の入院給付金で補てんされた金額が10万円でした。
- 実際に支払った医療費の合計額: 70万円
- 保険金などで補てんされる金額: 10万円
- 控除の基準額: 10万円(総所得金額等が200万円以上のため)
医療費控除額=70万円−10万円−10万円=50万円
この場合、Aさんは50万円の医療費控除を受けられます。
例2:総所得金額等が200万円未満の場合
Bさんは年収250万円で、総所得金額等は180万円だとします。
1年間にかかった医療費の合計が40万円、高額療養費制度で補てんされた金額が5万円でした。
- 実際に支払った医療費の合計額: 40万円
- 保険金などで補てんされる金額: 5万円
- 控除の基準額: 9万円(総所得金額等180万円の5%)
医療費控除額=40万円−5万円−9万円=26万円
この場合、Bさんは26万円の医療費控除を受けられます。
オールオン4も対象になる
医療費控除の対象となる医療費には、医師や歯科医師による治療費が含まれます。歯科検診の費用や、虫歯・歯周病の治療を目的としない予防・審美目的のクリーニング費用は、医療費控除の対象外です。しかし、歯周病の治療として行われるクリーニングなど、明確に「治療行為」と認められる場合は、控除の対象となることがあります。
国税庁のホームページが示す通り、医療費控除の対象条件に、保険適用であるか否かは含まれていません。そのため歯を失ったことに対する補綴治療であるオールオン4も、医療費控除の対象となります。
参考:国税庁『No.1122 医療費控除の対象となる医療費|国税庁』
医療費控除の申請手順
医療費控除には、年末調整を受けている人でも確定申告(還付申告)が必要です。オールオン4を含む医療費控除の対象となる治療を受けた際は、領収書や診療明細書を必ず保管しておきましょう。これに加えて、健康保険組合などから定期的に送付される「医療費のお知らせ」も活用できます。
また、治療のために薬局で購入した医薬品の費用や、通院のために必要な交通費(公共交通機関の利用が原則)なども医療費控除の対象です。交通費は領収書を発行してもらうのが難しい場合もあるため、メモやExcelなどに記録しておくのがおすすめです。
確定申告(還付申告)は、書面での申告も電子申告もできます。どちらの場合も、「自分で負担した医療費(薬や交通費も含む)」の情報を手元に用意しておきましょう。
e-Tax(電子申告)を利用する場合の一般的な手順は以下の通りです。
- パソコンやスマホのブラウザ(推奨環境あり)で国税庁の「確定申告等作成コーナー」にアクセスする
- トップページ右上の「医療費集計フォーム」からExcelのテンプレートをダウンロードする
- ダウンロードした集計フォームのExcelに、領収書や医療費のお知らせ・交通費の記録を基に各項目を入力していく
- ブラウザの「確定申告等作成コーナー」に戻り、「作成開始」をクリックする
- ガイドに従って操作を進める(マイナンバーカードの有無や、e-Taxでの電子申告か書面での申告かなどを答えていく)
- 医療費控除の入力の画面に進み、必要事項を入力していく
- 医療費の入力方法で「医療費集計フォームを読み込む」を選択し、治療費などを入力したExcelファイルをアップロードする
- 入力内容が反映されていることを確認し、他に申告すべき控除がなければ、確定申告書の作成は完了です。
【重要】
国税庁のウェブサイトは定期的に更新されるため、上記手順はあくまで一般的な流れです。実際の操作画面や手順は変更される可能性があるため、常に最新の情報を国税庁のウェブサイトでご確認ください。
オールオン4が医療費控除の対象となる理由と保険適用外との違い
オールオン4は保険が適用できないのに、なぜ医療費控除の対象にはなるのかと疑問に思う方もいるかもしれません。理由は保険診療(公的医療保険制度)と医療費控除という制度が、全く異なる目的で設けられているためです。
保険診療と医療費控除それぞれの目的
保険診療を提供する公的医療保険制度は、国民が最低限の医療を公平に受けられるようにするための制度です。所得が低くても、保険適用の治療なら必要に応じて高額でも限度額のみで受けられます。
一方、医療費控除は高額な医療費を支払った人の税負担を減らす目的で設けられている制度です。最低限の治療を受けさせるためではないので、自由診療でも美容整形や美容目的の歯科矯正など、例外を除いて治療に該当すれば控除対象になります。
オールオン4は生活機能を取り戻す「治療行為」と見なされる
オールオン4の効果は、歯を取り戻して見た目を整えるだけではありません。噛む力を再び得て家族と同じ食事ができるようになる、歯がないことによる発音の不自由を治すといった「生活機能の回復」という治療効果があります。
このため、オールオン4は自由診療ではあるものの、単に審美性の向上のみを目的とする美容整形や美容目的の歯科矯正とは、医療費控除における扱いが異なります。入れ歯という代替策はあっても、オールオン4はより良い選択肢としての「治療」だと認められます。
オールオン4の費用負担が気になるなら芝公園歯科
オールオン4を検討している方が気になるのは、やはり費用ではないでしょうか。保険適用はできなくても、リーズナブルに治療を提供できる医院を選ぶことはできます。当院では患者様の経済的負担を抑えつつ、質の高いオールオン4治療の提供が可能です。
都内の相場より安価にオールオン4治療を提供
東京都では、オールオン4の平均的な価格帯が片顎330万円~370万円程度となっています。対して当院の価格設定は、片顎242万円~264万円(税込)です。いずれもフルジルコニアセラミックスクラウンを上部構造体に装着した場合の比較なので、素材が安いわけではありません。
事前の3Dシミュレーションや治療プロセスの標準化といった、原価を抑える工夫によってリーズナブルなオールオン4治療を実現しました。仮歯が入るまで2時間~2時間半(通常5時間~9時間)という、治療スピードも原価の削減に貢献しています。
リーズナブルな価格でも信頼できる素材や設備
当院では、インプラント治療に特化し、治療行為の効率化を図ることで必要経費を圧縮しています。そのため素材や設備にはしっかりとこだわっています。実際、全ての上部構造体には耐久性と審美性の高いフルジルコニアセラミックスを採用しています。
また、無菌治療室やCTスキャンなど、患者様が安心して治療を受けられる環境づくりも万全です。最新のナビゲーションシステムも導入し、治療の精度・効率ともに向上させています。
オールオン4の高い技術
当院が良質なオールオン4治療を提供できる背景に、確かな技術力があります。オールオン4治療を担当する当院理事長は、オールオン4治療の国際認定資格を取得したプロフェッショナルです。
さらに専門チームとの連携により、最新設備を駆使した精度の高い埋入も可能です。こうした技術力がスピードの向上にもつながり、結果としてリーズナブルなオールオン4治療を実現しています。
まとめ
オールオン4は先天性疾患や病気・ケガで補綴治療が必要になった場合など、一部の例外を除いて保険適用はできません。基本的には全て自己負担の自由診療です。ただ、審美目的ではなく身体機能の回復を目的とした治療に当たるため、医療費控除の対象となります。
決して安くないオールオン4の費用負担を減らしたいなら、医療費控除を活用して確定申告で申告しましょう。
安易に費用だけで判断せず、良質な治療を提供している信頼できる歯科医院を選ぶことも、結果的に費用を抑える賢い選択と言えます。安価な治療で問題が発生すれば、再治療や追加費用がかかり、最終的には高くついてしまう可能性があるからです。
オールオン4治療をご検討の際は、費用面だけでなく、治療の質や歯科医院の実績も考慮し、総合的に判断することをおすすめします。